殺生丸×りん(3)*R18注意!
4.
気を失ったりんの蜜壺からゆっくり指を引き抜くと、白く濁った蜜がどろりとよだれのように垂れてきた。
「!」
それだけで十分視覚を刺激するものだったが、蜜は今までのものより濃厚で芳醇(ほうじゅん)な香りを放ち殺生丸の嗅覚を強烈に刺激した。
ふらっと吸い寄せられるようにそこに屈み込んで一口すする。
すぐには飲み込まずに舌で転がしてじっくりと味わう・・・少しネバついた食感のそれは‘りん‘の味がした。
まるでりんを喰らってそれが自分の血肉となり、永遠にひとつになる。
そんな錯覚にカッと体が熱くなるのを感じ、さっきまでのりんの痴態を思い出しながら執拗に秘所とその周囲についた蜜をすべて舐めとった。
それまで殺生丸はりんを愛しいと思っても、恋情を感じたことはなかった。
だが自分の舌にうち震えるさまに女の色気を感じ、快感に溢れ出す愛液のかぐわしさに体の欲望が押さえられなくなって初めて彼女が自分の雄の本能を強烈に刺激する`特別な女`であることを意識した。
この奔放で淫らな体を自分だけのものにしたい。
そんな思いに捉われそうになるのをギリッと唇を噛んでこらえる。
ふいに父のことを思い出した。
父上・・・。
私はかつて人間の女と契ったあなたを、妖怪の誇りを捨てた愚か者だと軽蔑していた。
その私が人間の女を欲しているなど、どの口が言えよう!
殺生丸は奇しくも父と同じ道を歩もうとする己(おのれ)を諌めた。
ふわふわの毛皮にくるまれ幸せそうに眠っているりんを見つめる。
目覚めた時、なにも憶えていなければいい。
そうすれば何もなかったことにできる。
お前が快楽に溺れた事も私がその蜜を堪能した事も、そして私がお前を・・・・。
しばらく思案顔で寝顔を見つめた後、りんの頬に軽く口づけると立ち上がってその場を後にした。
「待って」
ほんの2,3歩足を踏み出したところで背後から呼び止められ、柄にもなくドキリとして踏み止まってしまった。
「殺生丸様・・・どこにいくの??」
不安の混じったりんの泣きそうな声に振り向きそうになるのを堪えて足を踏み出した。
「また私を置いて行くの??」
今度は空を引き裂くような叫びにも似た声だった。
あれは桜の花が咲き乱れる春のことだった・・・。
少女の頃、置いてきぼりにされた時の悲しい記憶がよみがえり、涙が溢れてくる。
涙でぼやけた視界は、桜の花びらが止めどなく落ちて白くぼやけて見えたあの時の風景とよく似ていた。
「あの時・・・`待て`って・・・だから・・・・ちゃんと待ってたのに・・・。
迎えに来たから・・・私を・・抱いてくれたんじゃないの??」
さっきまで殺生丸がついに迎えにきてくれた、抱いてくれたと心も体も天にも昇る気分だったのに、目覚めたら一転、地に落とされたようなこの状況はあまりにも悲しすぎて涙がとまらない。
「迎えになど・・・・まして抱くつもりなどなかった。」
いつのまにか殺生丸が暗い顔をして目の前に立っていた。
そんな答えなんか聞きたくなかったのに・・・。
引き返してきた殺生丸が今となっては憎らしい。
そして殺生丸も自身の行動に答えを見出せずにいた。
一度目は辛いながらも手離すことが出来たのに、なぜか今はりんから離れることができない。
殺生丸は泣いているりんの肩を抱くでも背中をさするでもなく、なだめる言葉すらかけずに呆然と彼女を見降ろしているだけだった。
ざぁっと風が吹いて厚い雲が太陽を隠すと、辺りが暗くなり空気がひんやりとした。
「りん」
「・・・う・・・・・ひっく・・・」
「冷えてきた。 家に帰れ。」
「・・・・・・・・」
「りん!」
苛立った殺生丸の声にこのまま泣き続けることも虚しくなり、大きな溜め息を吐いて体を起こすと殺生丸の目を見据えて言い放った。
「帰るわ。 だから、もう二度と私の前に現れないで!」
殺生丸を待ち続けるのも、想い続けるのも、裏切られるのも、もううんざりだ。
あの日と違って今回は別れを告げることができた。 それだけでりんにはもう何も思い残すことはなかった。
「・・・・・・・わかっている。」
いつもより青白い顔をしてじっとりんを見つめた後、瞳を閉じて殺生丸はきびすを返した。
5.
「ん、もうっ!」
少し離れたところでりんの不機嫌な声が聞こえてきた。
帰り支度をしようと、りんが毛皮を取り払おうとするがさらに巻き付いて離れないのだった。
それでなくても待ちわびた人に裏切られ永遠の別れを告げたばかりで気がたっているのに、さんざんだ!
ふっと笑うと殺生丸は草むらに放ってあった、しわくちゃに乾いた着物を拾ってりんの元へ持っていった。
「二度と現れないでと言ったはずだけど?」
機嫌の悪いりんは差し出された着物をひったくるようにつかんで手をひいたが、殺生丸が手を離さなかったので着物は二人の間でビリビリっと裂けてしまった。
イライラし通しだったりんの怒りが頂点に達して文句を言おうと口を開きかけた時、そんなりんのことなど気にもならない様子でのんびりと赤く染まり始めた空を仰ぎながら、殺生丸が静かに話し始めた。
「里に預けてからはいつもお前の匂いを追っていた。
どんなに離れていようと、顔を見なくてもお前がどうしているかなど目に見えるようだった。」
遠い目をして懐かしむように少し微笑んでいたが次の瞬間表情が曇る。
「お前の体が大人のものに変わり始め、その匂いに引き寄せられるように男たちが周辺をうろつくようになったのをお前は知らなかっただろう?
お前は男に対してあまりにも無防備すぎる。
だからお前に特別な興味を持つ男達には二度と近づかせないようにしろ!と邪見に言いつけたこともある。」
「!」
殺生丸の思いもよらない告白に唖然としたが、考えてみれば思い当たる節があった。
これまで見合いの話がことごとく断わられていたのは、殺生丸の差し金だったのだ!
邪見ならきっと必要以上にこっぴどい嫌がらせをしたにちがいない、とりんは脅された男達に少し同情した。
「殺生丸様、なぜそんな事を・・・? どうして私の匂いを追ったりしたの??」
怒っているのではなく、彼の動機が知りたかった。
’愛しているから’、’好きだから’、最悪’心配だった’でもいい。 殺生丸が自分を必要としている言葉が聞きたかった。
「・・・」
殺生丸は答えない。
もう一度祈る気持ちで訊ねる。
「男の人を近づかせないようにしたのはなぜ?」
「・・・・・お前は健康で美しい娘に成長した。」
殺生丸がとんでもないことを真顔で言う。
`美しい娘`という言葉にりんの頬が少し紅潮した。
「あなたがおいしい食べ物や私に似合う着物を届けてくれたからだわ。」
今度は殺生丸が照れたように視線を反らした。
「体は大きくなっても、まだ子供だ。 見合いなどまだ早い。」
「でも里の友達はもう何人も祝言をあげているのに、私は男の人に触った事すら・・」
「関係ない! それにあんな腐抜けた男達にお前をまかせられない。」
「まかせられない?? 自分は手に負えなくて勝手に放り出したくせに!」
殺生丸の身勝手な言い草にりんは怒りを覚えた。
「私の事を好きでも愛しているわけでもないくせに、一度抱いたくらいで自分のもののように言わないで。」
「!」
この言葉に一瞬殺生丸の美しい顔が歪んだ。
だが相変わらず青白い顔をしてずっと黙ったままの殺生丸に反論してほしくて思ってもいないことを口にする。
「琥珀なら・・・きっと私を愛してくれる。」
兄と慕う琥珀しか異性を思いつかず、とっさに口からでた名前だった。
「許さぬ!」
殺生丸の形相が犬に変わり、カッと目が紅く燃えた。
ガウッと唸ると妖犬の本性を現したように飛びかかってりんを押し倒し、体の上に覆い被さって喉元に食らいついてきた。
「きゃ・・・」
「ガウウ・・・ガウ・・・ガルルル・・・・・・」
突然の変貌に驚くばかりで、りんは抵抗することも泣き叫ぶことも忘れてなすがまま貪られていた。
不思議な事に、その間りんには恐怖も痛みも感じられなかった。
殺生丸の牙は確かにりんの喉に突き立てられていたが、その肌を食い破る事は決してなかった。
「ウ~、ルル・・・ル・・・ル・・・・・・・・」
気持ちが落ち着いたのか唸り声が聞こえなくなり、牙のかわりに赤い舌が今まで噛んでいた肌をなだめるように舐めはじめた。
ぺろ・・・べろ・・・ぺろぺろ・・・・ぺろ
舌は頸動脈に沿って上がっていく。
顔に近づくにつれ人間の容姿に戻り、りんの唇に到達すると殺生丸は息が出来ないほど激しくりんの口の中を蹂躙し、両手は自分のものだと誇示するかのように乳房を鷲掴みにした。
「んん、んんん・・・」
口も胸も痛かったが殺生丸がこれほど激しく感情を剥き出しにした姿を自分に晒してくれた事が嬉しかった。
「許さぬ・・・琥珀など絶対に許さん!」
殺生丸はりんの耳を喉を肩を甘噛みしながら、手で胸を揉みしだく。
ぞくりとあわだつ肌に快感を覚えたがなんとか堪え、殺生丸に訊ねた。
「どうして? どうして琥珀だとそんなに怒るの??」
殺生丸はパッとりんの体から身を起こすと、わからないのかといいたげに片眉を上げた。
「ねえ、どうして?」
簡単に引き下がりそうにないりんに、殺生丸は苦虫をつぶしたような顔で話し始めた。
「今まであいつもお前もお互いを兄妹のようなものだと思っていただろう?
しかし川遊びの時、琥珀はお前に欲情していた。
それだけでも万死に値するのに、その揚げ句子供から目を離してお前を危険な目に遭わせた。
あの時、お前と子供達がその場にいなければ私はあいつを殺していた。」
思い出したのか、ぎりぎりと歯ぎしりする音がきこえる。
殺生丸が本気で言っている事は間違いない。
「ばかな事をいわないで! あれはただの事故よ」
りんの嗜めるような視線を受け止めると、殺生丸はふんと鼻をならした。
「お前は最初から琥珀を慕っていた・・・私には恐れをなしてなかなか近づかなかったのにな。
やはり人間同士惹かれあうのが自然の摂理だ。
いつなりと二人で夫婦(めおと)になるがいい。 ハッハハハ・・・」
そういって乾いた笑い声を上げた。
バシッ!!!
「殺生丸様のバカ!!
また勝手に一人で考えて、勝手に一人で結論出して、いつも私を自分から引き離そうとばかりする。
そんなに私はあなたにとって邪魔な存在なの?」
りんは殺生丸の頬を思い切りひっぱたいた。
ついさっきまで琥珀にやきもちを焼いているのかと希望をもったのに、その琥珀と夫婦になれとまたもや自分を突き離した言葉がたまらなくやるせなかった。
近づいたと思うと遠くなる人・・・。 彼はやはり私のことなど必要としていないのだ。
邪魔?
そんなものじゃない!!
’りんを失うことほど恐ろしい事はないのに・・・。’
殺生丸はりんに叩かれたことより、自身の心の叫びに気付いて驚いていた。
だから自分といるせいで体が弱っていくりんを里へ戻す決心をした。
だから人間の里に戻した後もいつまでも匂いで彼女を監視し、他の男にとられないように干渉した。
だから人間同士なんの障害もなく共にある事ができる琥珀が憎らしかった。
大切な存在だからこそ失うのが怖くて妖怪としての誇り、人間という種族の違い、父との確執、りんの幼さ・・・そんなつまらないことを理由にして必死で自分の想いを抑えようとしていただけだ。
彼女の身も心も自分のものにしたい。 `私`で充たしたい。
その思いはさっき彼女の体を味わってから消せないものになっていた。
’愛している’
内なる声が聞こえる。 この気持ちをそう呼ぶのか・・・?
ならば・・・そう、なのだろう。
りんを愛している。
誰かに取られるくらいなら、瘴気で弱ろうが自分の傍らにおいて片時も離すまい。
命が儚いなら、生ある限り私の全てをかけて守ってやる。
殺生丸の心は決まった。
「りん、愛している。
お前を誰にも渡したくない、誰にも触らせたくない。 私だけのものにしたいのだ。」
そう言ってりんを強く抱きしめた。
応えるように、りんも殺生丸の背に腕をまわしてぎゅうっと抱きしめた。
「やっと愛してるって言ってくれた! ありがとう、殺生丸様。
私もずっとあなたの事を愛していました。
ようやく私たち愛し合うことができたのね。」
抱擁を解いて殺生丸の目を見つめると、真剣な表情で哀願する。
「これからもずっとあなたと愛し合っていたい。 いつまでもあなたと一緒に生きて行きたい。
だからもう二度と離さないで。」
「???」
殺生丸はりんの言葉に違和感を覚えたが、敢えて何も言わずにりんを抱きしめた。
りんのこの天真爛漫さと淫猥な体がいつも傍にあるという魅力的な申し出をフイにするつもりなはい!
りんの頭上で殺生丸が妖しく微笑んだ。
(http://26403487.at.webry.info/201009/article_2.htmlに続く)
殺りん(2)のつづきでした。 いかがでしたでしょうか?
自分でいうのもナンですが、グダグダです。
なんたって殺生丸が建前ばかりで本音をさらそうとしないものだからこうなっちゃうんです。
さっさと認めて素直に「耳をすませば」のあまさわクンみたいに「好きだ~!」って言ってくれればいいのに、見ていたとか匂いを嗅いでいたとか・・・お前はストーカーか!
ヘンタイな部分をさらしていることも、りんに引かれているのにも気づかず最後はりんの平手打ちでようやくです。
犬夜叉と言いこの兄弟は直情的なくせに、恋愛に関してはぐだぐだ考えて悩むんですよ。
単なる恋愛下手かもしれませんが・・・。(殺生丸は絶対初恋だと思う!)
ラストに全てをいれ込もうとして、なかなかまとまらずこんな形でアップしてしまいました。
たぶん、いえ絶対修正が入ります。(ていうか、日々修正している)
えーと、最初の濃い蜜は医学的にはよくわかりませんが、排卵時のおりものをイメージしてください。
なんか子宮から直で出てくる体の細胞ってカンジしません? それで‘りん‘の味という表現にしたのですが・・・。
あと、りんと決別した殺生丸が着物を持って戻って来るあたり。
おわかりかもしれませんが、帰り支度をしたいりんの毛皮がとれなかったのは、ほかでもない殺生丸の意思でした。
ただ本人はあくまで無意識。その状況をみて初めてりんを離したくないという自分の本心に気づき、分身の毛皮の方が素直だな~とふっと笑ったわけで・・・それで戻って気持ちを伝える気になったんです。(叩かれるまではまだわかってなかったけどね)。
ほかにも自分にしかわからない表現もあって読んで下さっている方にはわかりづらいかもしれません。
コメント等でご指摘いただけると嬉しいです。
これで最後にするつもりだったんですが、エンディングですでにお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、りんの勘違いとか殺生丸のたくらみとか・・・説明的なものをエピローグにしました。
最後は少し明るめに・・・初体験もあります。
面白そうだと思われる方は、どうぞ次回までお付き合いください。
チョキ
気を失ったりんの蜜壺からゆっくり指を引き抜くと、白く濁った蜜がどろりとよだれのように垂れてきた。
「!」
それだけで十分視覚を刺激するものだったが、蜜は今までのものより濃厚で芳醇(ほうじゅん)な香りを放ち殺生丸の嗅覚を強烈に刺激した。
ふらっと吸い寄せられるようにそこに屈み込んで一口すする。
すぐには飲み込まずに舌で転がしてじっくりと味わう・・・少しネバついた食感のそれは‘りん‘の味がした。
まるでりんを喰らってそれが自分の血肉となり、永遠にひとつになる。
そんな錯覚にカッと体が熱くなるのを感じ、さっきまでのりんの痴態を思い出しながら執拗に秘所とその周囲についた蜜をすべて舐めとった。
それまで殺生丸はりんを愛しいと思っても、恋情を感じたことはなかった。
だが自分の舌にうち震えるさまに女の色気を感じ、快感に溢れ出す愛液のかぐわしさに体の欲望が押さえられなくなって初めて彼女が自分の雄の本能を強烈に刺激する`特別な女`であることを意識した。
この奔放で淫らな体を自分だけのものにしたい。
そんな思いに捉われそうになるのをギリッと唇を噛んでこらえる。
ふいに父のことを思い出した。
父上・・・。
私はかつて人間の女と契ったあなたを、妖怪の誇りを捨てた愚か者だと軽蔑していた。
その私が人間の女を欲しているなど、どの口が言えよう!
殺生丸は奇しくも父と同じ道を歩もうとする己(おのれ)を諌めた。
ふわふわの毛皮にくるまれ幸せそうに眠っているりんを見つめる。
目覚めた時、なにも憶えていなければいい。
そうすれば何もなかったことにできる。
お前が快楽に溺れた事も私がその蜜を堪能した事も、そして私がお前を・・・・。
しばらく思案顔で寝顔を見つめた後、りんの頬に軽く口づけると立ち上がってその場を後にした。
「待って」
ほんの2,3歩足を踏み出したところで背後から呼び止められ、柄にもなくドキリとして踏み止まってしまった。
「殺生丸様・・・どこにいくの??」
不安の混じったりんの泣きそうな声に振り向きそうになるのを堪えて足を踏み出した。
「また私を置いて行くの??」
今度は空を引き裂くような叫びにも似た声だった。
あれは桜の花が咲き乱れる春のことだった・・・。
少女の頃、置いてきぼりにされた時の悲しい記憶がよみがえり、涙が溢れてくる。
涙でぼやけた視界は、桜の花びらが止めどなく落ちて白くぼやけて見えたあの時の風景とよく似ていた。
「あの時・・・`待て`って・・・だから・・・・ちゃんと待ってたのに・・・。
迎えに来たから・・・私を・・抱いてくれたんじゃないの??」
さっきまで殺生丸がついに迎えにきてくれた、抱いてくれたと心も体も天にも昇る気分だったのに、目覚めたら一転、地に落とされたようなこの状況はあまりにも悲しすぎて涙がとまらない。
「迎えになど・・・・まして抱くつもりなどなかった。」
いつのまにか殺生丸が暗い顔をして目の前に立っていた。
そんな答えなんか聞きたくなかったのに・・・。
引き返してきた殺生丸が今となっては憎らしい。
そして殺生丸も自身の行動に答えを見出せずにいた。
一度目は辛いながらも手離すことが出来たのに、なぜか今はりんから離れることができない。
殺生丸は泣いているりんの肩を抱くでも背中をさするでもなく、なだめる言葉すらかけずに呆然と彼女を見降ろしているだけだった。
ざぁっと風が吹いて厚い雲が太陽を隠すと、辺りが暗くなり空気がひんやりとした。
「りん」
「・・・う・・・・・ひっく・・・」
「冷えてきた。 家に帰れ。」
「・・・・・・・・」
「りん!」
苛立った殺生丸の声にこのまま泣き続けることも虚しくなり、大きな溜め息を吐いて体を起こすと殺生丸の目を見据えて言い放った。
「帰るわ。 だから、もう二度と私の前に現れないで!」
殺生丸を待ち続けるのも、想い続けるのも、裏切られるのも、もううんざりだ。
あの日と違って今回は別れを告げることができた。 それだけでりんにはもう何も思い残すことはなかった。
「・・・・・・・わかっている。」
いつもより青白い顔をしてじっとりんを見つめた後、瞳を閉じて殺生丸はきびすを返した。
5.
「ん、もうっ!」
少し離れたところでりんの不機嫌な声が聞こえてきた。
帰り支度をしようと、りんが毛皮を取り払おうとするがさらに巻き付いて離れないのだった。
それでなくても待ちわびた人に裏切られ永遠の別れを告げたばかりで気がたっているのに、さんざんだ!
ふっと笑うと殺生丸は草むらに放ってあった、しわくちゃに乾いた着物を拾ってりんの元へ持っていった。
「二度と現れないでと言ったはずだけど?」
機嫌の悪いりんは差し出された着物をひったくるようにつかんで手をひいたが、殺生丸が手を離さなかったので着物は二人の間でビリビリっと裂けてしまった。
イライラし通しだったりんの怒りが頂点に達して文句を言おうと口を開きかけた時、そんなりんのことなど気にもならない様子でのんびりと赤く染まり始めた空を仰ぎながら、殺生丸が静かに話し始めた。
「里に預けてからはいつもお前の匂いを追っていた。
どんなに離れていようと、顔を見なくてもお前がどうしているかなど目に見えるようだった。」
遠い目をして懐かしむように少し微笑んでいたが次の瞬間表情が曇る。
「お前の体が大人のものに変わり始め、その匂いに引き寄せられるように男たちが周辺をうろつくようになったのをお前は知らなかっただろう?
お前は男に対してあまりにも無防備すぎる。
だからお前に特別な興味を持つ男達には二度と近づかせないようにしろ!と邪見に言いつけたこともある。」
「!」
殺生丸の思いもよらない告白に唖然としたが、考えてみれば思い当たる節があった。
これまで見合いの話がことごとく断わられていたのは、殺生丸の差し金だったのだ!
邪見ならきっと必要以上にこっぴどい嫌がらせをしたにちがいない、とりんは脅された男達に少し同情した。
「殺生丸様、なぜそんな事を・・・? どうして私の匂いを追ったりしたの??」
怒っているのではなく、彼の動機が知りたかった。
’愛しているから’、’好きだから’、最悪’心配だった’でもいい。 殺生丸が自分を必要としている言葉が聞きたかった。
「・・・」
殺生丸は答えない。
もう一度祈る気持ちで訊ねる。
「男の人を近づかせないようにしたのはなぜ?」
「・・・・・お前は健康で美しい娘に成長した。」
殺生丸がとんでもないことを真顔で言う。
`美しい娘`という言葉にりんの頬が少し紅潮した。
「あなたがおいしい食べ物や私に似合う着物を届けてくれたからだわ。」
今度は殺生丸が照れたように視線を反らした。
「体は大きくなっても、まだ子供だ。 見合いなどまだ早い。」
「でも里の友達はもう何人も祝言をあげているのに、私は男の人に触った事すら・・」
「関係ない! それにあんな腐抜けた男達にお前をまかせられない。」
「まかせられない?? 自分は手に負えなくて勝手に放り出したくせに!」
殺生丸の身勝手な言い草にりんは怒りを覚えた。
「私の事を好きでも愛しているわけでもないくせに、一度抱いたくらいで自分のもののように言わないで。」
「!」
この言葉に一瞬殺生丸の美しい顔が歪んだ。
だが相変わらず青白い顔をしてずっと黙ったままの殺生丸に反論してほしくて思ってもいないことを口にする。
「琥珀なら・・・きっと私を愛してくれる。」
兄と慕う琥珀しか異性を思いつかず、とっさに口からでた名前だった。
「許さぬ!」
殺生丸の形相が犬に変わり、カッと目が紅く燃えた。
ガウッと唸ると妖犬の本性を現したように飛びかかってりんを押し倒し、体の上に覆い被さって喉元に食らいついてきた。
「きゃ・・・」
「ガウウ・・・ガウ・・・ガルルル・・・・・・」
突然の変貌に驚くばかりで、りんは抵抗することも泣き叫ぶことも忘れてなすがまま貪られていた。
不思議な事に、その間りんには恐怖も痛みも感じられなかった。
殺生丸の牙は確かにりんの喉に突き立てられていたが、その肌を食い破る事は決してなかった。
「ウ~、ルル・・・ル・・・ル・・・・・・・・」
気持ちが落ち着いたのか唸り声が聞こえなくなり、牙のかわりに赤い舌が今まで噛んでいた肌をなだめるように舐めはじめた。
ぺろ・・・べろ・・・ぺろぺろ・・・・ぺろ
舌は頸動脈に沿って上がっていく。
顔に近づくにつれ人間の容姿に戻り、りんの唇に到達すると殺生丸は息が出来ないほど激しくりんの口の中を蹂躙し、両手は自分のものだと誇示するかのように乳房を鷲掴みにした。
「んん、んんん・・・」
口も胸も痛かったが殺生丸がこれほど激しく感情を剥き出しにした姿を自分に晒してくれた事が嬉しかった。
「許さぬ・・・琥珀など絶対に許さん!」
殺生丸はりんの耳を喉を肩を甘噛みしながら、手で胸を揉みしだく。
ぞくりとあわだつ肌に快感を覚えたがなんとか堪え、殺生丸に訊ねた。
「どうして? どうして琥珀だとそんなに怒るの??」
殺生丸はパッとりんの体から身を起こすと、わからないのかといいたげに片眉を上げた。
「ねえ、どうして?」
簡単に引き下がりそうにないりんに、殺生丸は苦虫をつぶしたような顔で話し始めた。
「今まであいつもお前もお互いを兄妹のようなものだと思っていただろう?
しかし川遊びの時、琥珀はお前に欲情していた。
それだけでも万死に値するのに、その揚げ句子供から目を離してお前を危険な目に遭わせた。
あの時、お前と子供達がその場にいなければ私はあいつを殺していた。」
思い出したのか、ぎりぎりと歯ぎしりする音がきこえる。
殺生丸が本気で言っている事は間違いない。
「ばかな事をいわないで! あれはただの事故よ」
りんの嗜めるような視線を受け止めると、殺生丸はふんと鼻をならした。
「お前は最初から琥珀を慕っていた・・・私には恐れをなしてなかなか近づかなかったのにな。
やはり人間同士惹かれあうのが自然の摂理だ。
いつなりと二人で夫婦(めおと)になるがいい。 ハッハハハ・・・」
そういって乾いた笑い声を上げた。
バシッ!!!
「殺生丸様のバカ!!
また勝手に一人で考えて、勝手に一人で結論出して、いつも私を自分から引き離そうとばかりする。
そんなに私はあなたにとって邪魔な存在なの?」
りんは殺生丸の頬を思い切りひっぱたいた。
ついさっきまで琥珀にやきもちを焼いているのかと希望をもったのに、その琥珀と夫婦になれとまたもや自分を突き離した言葉がたまらなくやるせなかった。
近づいたと思うと遠くなる人・・・。 彼はやはり私のことなど必要としていないのだ。
邪魔?
そんなものじゃない!!
’りんを失うことほど恐ろしい事はないのに・・・。’
殺生丸はりんに叩かれたことより、自身の心の叫びに気付いて驚いていた。
だから自分といるせいで体が弱っていくりんを里へ戻す決心をした。
だから人間の里に戻した後もいつまでも匂いで彼女を監視し、他の男にとられないように干渉した。
だから人間同士なんの障害もなく共にある事ができる琥珀が憎らしかった。
大切な存在だからこそ失うのが怖くて妖怪としての誇り、人間という種族の違い、父との確執、りんの幼さ・・・そんなつまらないことを理由にして必死で自分の想いを抑えようとしていただけだ。
彼女の身も心も自分のものにしたい。 `私`で充たしたい。
その思いはさっき彼女の体を味わってから消せないものになっていた。
’愛している’
内なる声が聞こえる。 この気持ちをそう呼ぶのか・・・?
ならば・・・そう、なのだろう。
りんを愛している。
誰かに取られるくらいなら、瘴気で弱ろうが自分の傍らにおいて片時も離すまい。
命が儚いなら、生ある限り私の全てをかけて守ってやる。
殺生丸の心は決まった。
「りん、愛している。
お前を誰にも渡したくない、誰にも触らせたくない。 私だけのものにしたいのだ。」
そう言ってりんを強く抱きしめた。
応えるように、りんも殺生丸の背に腕をまわしてぎゅうっと抱きしめた。
「やっと愛してるって言ってくれた! ありがとう、殺生丸様。
私もずっとあなたの事を愛していました。
ようやく私たち愛し合うことができたのね。」
抱擁を解いて殺生丸の目を見つめると、真剣な表情で哀願する。
「これからもずっとあなたと愛し合っていたい。 いつまでもあなたと一緒に生きて行きたい。
だからもう二度と離さないで。」
「???」
殺生丸はりんの言葉に違和感を覚えたが、敢えて何も言わずにりんを抱きしめた。
りんのこの天真爛漫さと淫猥な体がいつも傍にあるという魅力的な申し出をフイにするつもりなはい!
りんの頭上で殺生丸が妖しく微笑んだ。
(http://26403487.at.webry.info/201009/article_2.htmlに続く)
殺りん(2)のつづきでした。 いかがでしたでしょうか?
自分でいうのもナンですが、グダグダです。
なんたって殺生丸が建前ばかりで本音をさらそうとしないものだからこうなっちゃうんです。
さっさと認めて素直に「耳をすませば」のあまさわクンみたいに「好きだ~!」って言ってくれればいいのに、見ていたとか匂いを嗅いでいたとか・・・お前はストーカーか!
ヘンタイな部分をさらしていることも、りんに引かれているのにも気づかず最後はりんの平手打ちでようやくです。
犬夜叉と言いこの兄弟は直情的なくせに、恋愛に関してはぐだぐだ考えて悩むんですよ。
単なる恋愛下手かもしれませんが・・・。(殺生丸は絶対初恋だと思う!)
ラストに全てをいれ込もうとして、なかなかまとまらずこんな形でアップしてしまいました。
たぶん、いえ絶対修正が入ります。(ていうか、日々修正している)
えーと、最初の濃い蜜は医学的にはよくわかりませんが、排卵時のおりものをイメージしてください。
なんか子宮から直で出てくる体の細胞ってカンジしません? それで‘りん‘の味という表現にしたのですが・・・。
あと、りんと決別した殺生丸が着物を持って戻って来るあたり。
おわかりかもしれませんが、帰り支度をしたいりんの毛皮がとれなかったのは、ほかでもない殺生丸の意思でした。
ただ本人はあくまで無意識。その状況をみて初めてりんを離したくないという自分の本心に気づき、分身の毛皮の方が素直だな~とふっと笑ったわけで・・・それで戻って気持ちを伝える気になったんです。(叩かれるまではまだわかってなかったけどね)。
ほかにも自分にしかわからない表現もあって読んで下さっている方にはわかりづらいかもしれません。
コメント等でご指摘いただけると嬉しいです。
これで最後にするつもりだったんですが、エンディングですでにお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、りんの勘違いとか殺生丸のたくらみとか・・・説明的なものをエピローグにしました。
最後は少し明るめに・・・初体験もあります。
面白そうだと思われる方は、どうぞ次回までお付き合いください。
チョキ
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